商いの動機付け・衛生理論②

前回、フレデリック・ハーズバーグの動機付け・衛生要因について述べました。                     実は、お客さんの購買行動にもこの2つの要因が存在します。

よそより10万円高くてもお客さんが“喜んで買う”という町の電気屋さんがあります。                  東京都町田市に本社を置く「ライフテクトヤマグチ」(旧でんかのヤマグチ)という知る人ぞ知る有名なお店です。    

このお店は、四方を大型量販店に囲まれた典型的なレッドオーシャンの商圏にあって、激しい価格競争と品揃え競争をものともせず、絶大な顧客の支持を得ながら、コロナ禍にあっても粗利率40%超、20期以上の連続黒字という驚くような業績を誇っています。                                                    今やコモデティ化してしまった家電製品販売において、価格や品揃えの競争を続けていては、生き残ることは並大抵のことではありません。                                                     ※コモデティ化:商品の機能や品質、ブランドによる差別化ができなくなるため、低価格競争となってしまうこと

どうしてこのお店が支持され続けるのかは、いくつもの書籍となって紹介されているので、詳細はそこに譲りますが、なぜ、価格が高い、品揃えも多くないお店で、お客さんは喜んで買うのか、ということについて、動機付け・衛生理論に則っていうと、価格や品揃えという衛生要因を凌駕する動機付け要因があるからだといえます。
※「『町の電器屋さん』が大切にしていること」(すばる舎リンケージ)、「脱・値引き営業」(日経BPマーケティング)、「なぜこの店ではテレビが2倍の値段でも売れるのか?」(日経BPマーケティング)など

衛生要因とは、前述のように、それが満たされないと行動するモチベーションが下がってしまう要因です。        ビジネスの場合、その代表的な要素は価格です。                                  同じものであれば、誰でも安い方がうれしいものですが、他店より高いとわかれば不満足をおぼえて、他で購入してしまいます。消費者としては、当然の行動です。

一方で、価格という衛生要因が満たされなくても、それを上回る動機付け要因が満たされていれば、ヤマグチのように、価格が高くても喜んで買ってくれるひとがたくさん存在するというのも歴然とした事実です。                   このお店が、四方を安売の量販店に囲まれながらも毎年のように業績を向上していることがなによりの証明です。                                                             

「喜んで買う」つまり、その店で買うという行動そのものが、お客さんにとって価格以上の喜びとなっています。     他より高いことを知りながら、それでも喜んで買う・・・お客さんにそうさせる動機付け要因、それこそが他にはマネができない、このお店だけの価値なのです。

「ヤマグチ」はBtoCビジネスの事例ですが、これは、BtoBのビジネスでも変わりはありません。

価格や品揃えといった衛生要因に代えがたい動機付け要因、つまり、あなたの店や会社しか提供できない価値とは何でしょうか?

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